ジェンダーギャップ指数2021に見る、日本の女性活躍の実態

3月末に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2021」において、日本が世界156カ国中120位、主要7か国(G7)では最下位だったことを受け、各方面で改めて女性の活躍推進についての議論がなされています。

ジェンダーギャップ指数は、経済・教育・医療・政治の4つの分野における男女格差の状況を指数化し、国別に順位をつけたもので、日本の順位が120位と低くなっている大きな要因は、政治と経済にあります。

高齢化と少子化による労働力の減少は、日本経済を減速させている大きな要因です。政府は眠れる労働力と言われる女性を積極的に労働市場へ呼び込むことで、労働力不足の解消を図ろうとしていますが、この指数(経済117位)が示す通り、日本社会において女性の雇用とエンパワーメントはまだまだ理想からほど遠い状態であることが伺えます。

当社は、世界中の人が未来に希望を持ち、「いま」を輝ける社会を目指すことをビジョンに掲げ、「女性活躍推進」にも積極的に取り組んでいることもあり、ジェンダーギャップ指数の結果が発表された後、社内で職場における女性の活躍推進についての意見交換が行われました。今回は、南米チリ出身の広報担当ハビエラ アソカル・エストラダが、イマクリエ社内で行った女性の活躍推進に関するディスカッションの内容をまとめてご紹介します。

 

日本企業の女性活躍推進のための取り組み

今年2月にエン・ジャパン株式会社が400社を超える日本企業を対象に行った調査によると、社内で女性社員の活躍・定着に取り組んでいる企業はわずか41%であることが明らかになっています。2018年と比較して11ポイント減少しています。これは、2013年に安倍晋三前首相が成長戦略の柱として女性活躍政策(ウーマノミクス)を掲げたことを考慮すると、かなり物足りない数字です。

女性の活躍推進を促進するために効果的な措置を講じるとした政府の試みが、残念ながら失敗に終わっている状況は、日本の政界に女性の存在が少ないことを見れば明らかですが、企業においてはどうでしょうか。

女性の労働力率上昇は、経済成長率を促進する可能性が高いことが報告されていますが、企業において女性の雇用を促進するための施策は進んでいないように見受けられます。

また、男女共同参画に関する企業の宣言では、女性従業員のさらなる昇進を方針の中心に据えているという主張がよく見られますが、日本企業は口先だけでなく実際にこれらの政策に取り組んでいるのでしょうか?女性活躍推進は、結局のところ企業の社会的責任(CSR)の一環として、あるいは女性の人権の問題として捉えられているに過ぎないのではないのかと思わざるをえません。

 

女性管理職「3割」の目標はどこへ

ジェンダーギャップ指数2021レポートで際立っていたもう一つの点は、議員、高官、および管理職の女性割合が低いことでした。 日本はこのカテゴリーで139位で、OECD(経済協力開発機構)加盟国37か国中では最下位でした。(同加盟国中、韓国(134位)、さらにはトルコ(133位)が僅差で日本を上回っています。)

日本で女性管理職が増えない問題には様々な要因が考えられますが、その一つにジェンダーバイアスがあるのではないでしょうか。たとえば、女性がビジネスの場において強い主張をすると、感情的だ、ヒステリーだと捉えられることがあるなど、男性と平等かつ正当な評価や扱いが得られないことがあります。これは男性が女性に対して持っているバイアスに起因しています。

これに加えて見逃せないのは、女性自身が管理職になることを希望しないことだという主張があることです。

女性が管理職に挑戦しない理由の一つに、女性が自分自身に対して持っているバイアスで、「自分は管理職になるほど有能ではない。」という思い込んでいる場合があります。周囲にロールモデルとなる女性管理職が少なく、男性管理職ばかりの環境で働く女性ほど、このように考える傾向が高いようです。

また、管理職になると職責がより重くなるため、長時間勤務を余儀なくされたり、勤務時間外や休日まで犠牲にしなければならなくなるのではないかと不安を感じることが多いと言われています。

特に、初めて管理職になる年齢は20代後半~30代で結婚や出産等の女性の人生における大きなイベントが起こる年代と重なることが多いため、キャリアと私生活を天秤にかけて悩んでしまうのは至極当然の事と言えるでしょう。

イマクリエでは2021年3月末時点において、主任級にあたるリーダー以上の男女比率は「男性が29%、女性が71%」。管理職にあたるマネージャー以上では「男性が42%、女性が58%」と女性が上回っています。この数字は、政府目標である「女性管理職30%以上」ならびに帝国データバンクが2020年8月に発表した日本企業1万1,732社への調査結果における女性管理職割合の平均7.8%と比較すれば、圧倒的に高い結果であると言えます。

ではなぜ当社では、管理職に女性が多いのでしょうか。

働き方改革を背景に、多くの企業で残業削減が進んでいますが、加えて当社では、常に約90%以上の人が常時テレワークで働いているため、通勤時間も不要となり、ワーク・ライフバランスを取りやすい環境であることが、女性でも管理職に挑戦しやすい職場作りに貢献していると考えています。また、すでに社内に女性管理職が多くいること、つまりロールモデルを見つけやすい職場であることも、女性が管理職に挑戦することを後押ししていると分析しています。

男女の差別なく、誰でもテレワークで働く事を認めているイマクリエでは、男性従業員がワークライフバランスのとれた生活を送ることができることで、結果的にその家族にも良い影響を与えていると考えています。

たとえば、当社のコンタクトセンターでマネージャーとして働く男性はこう言います。
「出勤がないためゆっくりした朝を迎えられるのは、自分と家族にとって良い変化でした。現在妻と、家事を分担し家の仕事を分かち合えるのも、テレワークという形態で働く事ができたからだと思います。

テレワークでは自分の時間を自分でコントロールでき、隙間時間で洗濯物や、自身のやりたいことを行う事ができます。常に在宅している事で、家族も安心でき、落ち着いた生活が出来ると思ってもらえるようにしていきたいです。(当社ウェブサイト 採用情報より抜粋)」

また、業務委託で当社の業務を行っている別の男性は、このように話します。

「妻も働いているので、朝、互いのスケジュールをすり合わせ、隙間時間を利用し家事、掃除などを分担しています。家族と細かくコミュニケーション取ることができて、家事や育児に参加できるのは在宅勤務の強みです。

女性の活躍推進は、単なるCSRや女性の人権の問題ではなく、経済成長の鍵であることはすでに証明されています。日本企業が女性の活躍推進の施策を進める上で参考にできることはないか、ジェンダーギャップ指数で日本よりも上位にいる国について、研究してみたいと考えています。

次回のブログでは、筆者の母国チリで、女性のエンパワーメントに関する活動も行っている企業弁護士へのインタビューから得た学びをご紹介します。

ライター

ハビエラ アソカル・エストラダ
株式会社イマクリエ
広報・マーケティング担当

チリ出身、東京在住。

日本語・スペイン語・英語・フランス語・ロシア語を操るマルチリンガル

2020年 ソルボンヌ大学(パリ)にて国際関係・海外行動学修士課程修了
大学院在学中にイマクリエのインターンシッププログラムに参加し、卒業後、2020年11月に正社員として入社。現在は広報・マーケティング業務を担当